自分の従兄弟で、特に霊感の強い女の子がいるのですが、本人に聞くと「ちっともいいことない」んだそうです。
違う従兄弟の結婚式に出席したとき、その子はずっと胸に何かを握り締めて、うつむいてるんです。
最初は感極まってるのかと思ったんですが、そうじゃなかった。
その後、親戚内で食事会みたいなのをしているときにも、ずっとうつむいてた。
私はそのときも大して気にせず、飯をパクついてたんですが、どうも気になる『臭い』がする。
なんだかカビ臭いというか、押入れの奥のものを取り出したときのような…
自分はこの匂いを表現するのに、『古い写真の匂い』と言ってるんですが、どうも鼻についたんです。
その匂いの元を探してるうちに、それはどうも、窓の外から臭っているような気がしてならなくなったんです。
そんな馬鹿なと思いました。だってそこは、ビルの15階くらいでしたから。でも、そんな自分と目が合ったのが、その子だったんです。
なんとなくただならぬ気配を感じたので、そのことを話しました。うろ覚えですが、以下彼女の言ったことを抜粋します
「あなたは私と同じように、感じることはできるみたい。でも、私みたいに見ることはできない。でも、それはむしろいいこと。
こんなおめでたい席なのに、自分は結婚式のときからずっと耐えている。
多分、幸せそうな従兄弟を妬んでいるんだと思うけど、『死ね』とか『苦しめ』とか、そんな言葉ばかりしか聞こえてこない。
私は聞こえるし見えるけれど、あなたは嗅覚で感じているんだと思う。繰り返しいうけれど、見えないほうがいい」
結局、何が見えていたのかは話してくれませんでしたが、どうもソレは複数で、ビルの窓の一面に張り付いているらしいのです。
そして彼女は、手に持っていたものを広げて見せてくれました。それはお守りでした。
何でも、あまりにもそういう目にあいすぎて、ノイローゼ気味になったときに、相談に行ったお寺の、偉い住職の方に貰った物だとか…
話はつい最近に飛びます。私は京都の大学に通っていたのですが、友達といわゆる心霊スポットに出かけることが結構あったんです。
でも、それまでに心底ヤバイと感じるようなところはありませんでした。
あるとき、その中でも飛び切り向こう見ずな奴が、「すごい廃墟を見つけた」って誘いにきたんです。
私はへえ~と、最初行く気満々だったんですが、いざ立ち上がろうとしたときに、スン、と鼻についたんです。あの臭いが。
あのときの感覚は一生忘れません。なんていうんですか、それまで感じたことのないような危機感と言うか、
もしそんなものがあるんなら、それこそ背後霊がよってたって引き止めているような、とにかく凄まじく行きたくなくなったんです。
私は友達の誘いを何とか振り切って、自分の部屋に残りました。でも、あの臭いは部屋から消えないんです。
何か部屋にいるのか?と半パニック状態で、布団に包まりました。それでも鼻で呼吸をするたびに、あの臭いがします。
ガタガタと震えながらしばらくたったころ、携帯電話が鳴りました。
当然出るのも嫌だったのですが、着信がさっきの友人からだったこともあって、一応出たんです。
『よお××。やっぱり来ない?』「だ、だから嫌だって」
『そうか。他のみんないるのになあ…』「すまん、どうしても行きたくないんだ」
『そうか、ならいいや』「すまん」 そのあと、また布団に包まって震えているうちに、いつしか臭いはしなくなりました。
今でも覚えています。その後、友達に言われたことを。
彼は結局、その廃墟(廃ビルらしいです)の前まで行ったところで、強烈に私が嫌がったことを思い出して、そこから電話をしたのだとか。
俺がやっぱり尋常じゃないのを感じて、彼も急に恐ろしくなったんだとか。そして引き返したんだそうです。
彼は前に言ったとおり、向こう見ずな奴だったんで、『一人で』そこに行ったそうです。
『他のみんな』なんて言った記憶はないとか…。ほんと、もし誘いに乗っていたら、どうなってたかわかりません。
そんな事があって以来、今でもなんとなく、『嗅ぐ』ことに躊躇いを感じることがあります。
少しはあの従兄弟の気持ちがわかったような気がします。