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軽自動車 2ch怖い話

2ch怖い話

何年か前に、ひどい目にあった話を投下します。

何年か前のある日の夕方、俺は友人Aを乗せて車を走らせていた。
少し離れた友人Bの家で、酒盛りをする為である。
プチ同窓会のような感じで、大学時代の仲の良かった10人くらいで
集まって飲もうか、ということになったのである。
そこで、家の近かったAを拾ってからBの家に向かう予定だったが、
Aが時間を勘違いしていて、出発が遅れたのである。
平謝りするAを車に乗せて結構なスピードで走っていたが、間に合うかどうか微妙だった。

友人Bの家は、山を越えた向こう側にあった。山越えの道に入ったら、車は俺ら以外に走っていなかった。
曲がりくねってはいるが一本道で、信号もなく片側一車線のそれなりに走りやすい道なので、俺は調子に乗って飛ばしていた。

Aと他愛もない話をしながら車を走らせていると、
前方にやたらゆっくりと走っている、軽自動車のテールランプが見えた。
一本道であるために、山を越えてふもと付近に下りるまで追い越すスペースがない。
はっきり言って、焦っている俺たちには邪魔な存在だった。

そうこうしているうちに、軽に追いついてしまった。
俺とAは何を会話するわけでもなく、いらいらしながらその後ろを走っていた。
しばらく軽の後ろを我慢して走っていたが、やたら遅い。
カーブの度に止まりそうな位ブレーキを踏む。いくらなんでも遅すぎる。
この焦っている時に勘弁して欲しい、ってくらいの嫌味な速度で走り続ける軽自動車。俺はとうとう痺れを切らしてAに言った。

俺は「いくらなんでも遅すぎるよなあ。見通しのええ所で対向車線に入って追い越すぞ」と言ったのだが…。

ん?Aから返事がない。ちらっと見ると、Aは真っ青な顔をしていた。
なんだか尋常な様子ではない。調子に乗って飛ばしすぎたから、車に酔ってしまったのだろうか・・・。
気分悪いのかとAに声をかけるが、返事がない。
気分が悪いというか、何かに怯えているようにみえた。
「おい!A!なんだ?何があった?」ちと怒鳴り気味に声をかけると、Aははっとしたように口を開いた。
「あれはまずいぞ!早く追い越してくれ!」 前が遅くていらいらしている所に
Aの訳の分からんリアクションでさらにムカッと来た俺は、
少し見通しの良い直線に来たところで軽を追い越した。
軽の前に入ってグッと加速する。軽をバックミラーで確認すると、あっという間にいなくなった。

追い越しをかけて軽快に車を走らせていると、少し気分が落ち着いた。
Aの方をチラッとみると、Aも顔色が良くなって落ち着いているようなので、先ほどの事をたずねてみた。

「・・・あのさ、見間違いかも知れんけどな。あの軽っておかしくなかった?」
俺はどうせ爺さんか婆さんかおばはんの、とろとろ運転やろ?と思っていた。
Aは「・・・あの軽の中、見んかった?」と続ける。

しかし、歯切れ悪く「・・・まあ、ええやん。止めよ。この話」と終わらせようとしてきた。

「そこまで話し振っといて、なんやねん、一体」と反論しながら、
ふとバックミラーに目をやると、さっきまで何もいなかった真後ろに、
車が一台くっついて走っていた。というより、もろに煽られていた。

どう考えても、さっき追い越した軽が煽ってる以外に考えられない。
しかし、物凄い煽りようである。パッシングするはハイビームだわ・・・。
それでも、俺は速度上げて頑張って走ったが、一向に振り切れない。
そして、挙句の果てに、クラクションまで鳴らし始めた・・・。背筋に寒い物が走った。

「あかん。道譲るわ。さっきまであんだけとろかったくせに・・・」
そうAに告げると、Aが物凄い剣幕で言い返してきた。
「あかん、ぜったいあかん。譲ったら、止まったらあかん!!!」
俺はAの様子に少々びっくりしたが、落ち着いてAに言った。

「無理。こんな調子で煽られてこんな速度で走ってたら、事故起こすわ。譲る」
Aが何故か涙目で俺を見ていたが、「分かった」と一言言うとうつむいてしまった。
俺が道を譲ろうと左ウィンカーを出し、速度をゆっくり落としながら
車を左に寄せ始めると、「ゴツン」という衝撃が後ろから走った。
早く行けと、バンパーでこづいているような感じだった。
相手が尋常じゃない奴だと、今更ながら気付いた。

道を譲るのは無理だと判断した俺は、また速度を上げて走り始めた。
物凄く恐ろしかった。下手に減速できない。道を譲る事も出来ない。
とにかく逃げ込めるスペースのある場所まで、事故を起こさないように走り続けるしかなかった。
もう少し行けば、山頂に休憩用の駐車スペースがあったはずだ。

ものすごい煽りのプレッシャーを受けながらも、なんとか道の左側に山頂駐車場の出入り口が見えた。
24時間無料なので、出入り口はチェーンなど掛けられていない事は知っていたし、かなり広い場所なので、
スピードを出していたが、ぶつけずに駐車場に入る事が出来た。
駐車場の中に入ってすぐに車がスピンしてしまった。強引な角度で入ったためスピンしたのだろう。
突然のスピンに気が動転したが、幸いにも駐車場には他に車はなく、
かなり広い事もあって、どこにもぶつけずにすんだ。

停止してほっとして気がついた。あの軽自動車はいってしまっただろうか?
ふと一つしかない出入り口を見ると、その出入り口をふさぐ形で軽自動車が停車していた。全身総毛だった。
俺「どうしよ。なんか待ち伏せしてるみたいやで・・・」
Aに喋りかけたが、Aは先ほどからうつむいたまま、こちらを見ようともしなかった。
もともと気の強い方ではないAの事だ。かなりテンパッる事は、見ても分かるとおりだった。俺がしっかりしなきゃいけない。

それよりも、先ほどぶつけられている事も気になっていた。
傷でも付けられていたら、弁償してもらわなきゃいけない。立派な接触事故だ。
怯えてテンパッてるAを見ているのと、ぶつけられ煽られた事に腹が立ってきた俺は、
なんであんなのにこっちがおびえなきゃいけないんだ、という気になってきて、恐怖より怒りが前に出てきた。
俺はAに「ちょっと文句言ってくる」と、捨て台詞をはいて車から降り、軽自動車の方へ歩いていった。
もちろんAは物凄い剣幕で反対してきたが、降りてしまえば関係ない。
何でも出てきやがれ、って感じで怒りを前面に出して、相手のほうへ歩いていった。

軽に近づいて不思議に思ったが、中にどんな奴が乗っているか分からない。
前面までスモークフィルムを貼ってるのか?とか馬鹿なことを考えながら、
軽自動車の運転席の窓ガラスをノックした。すると、運転席側の窓がすーっと開いた。
中を見た俺は一瞬目を疑ったが、もう一度じっくり確認して・・・一目散に車のほうへ逃げ帰った。
今まで生きてきた中で、一番早く走って一番大きな声を出しながら・・・。

軽自動車の窓が開いた時、中には・・・人が乗っていた。
いや、そもそも人なんだろうか。それも何人も。
4人乗りの車に5人とか、そんなに生易しい物ではなかった。
もうギュウギュウ詰め。例えるなら、通勤ラッシュの満員電車状態である。
隙間がないくらいびっちりと、狭い軽自動車の中が人で埋まっていたのである。
上下左右人の向きは関係なく、テトリスで隙間なく積み上げていくブロックのように・・・。
しかも、全員顔色が真っ青で、目が空洞の様になっていた。老若男女いろんな人・・・。
その苦しそうな体勢の人たちが一斉に、窓の外に立っている俺のほうに顔を向けているのである。
首が180度回っている奴もいた。結局、中が見えなかったのは、人で車内が埋まっていたからである。

車に戻ると慌てて車を発進させた。Aは何も言わず、うつむいてガチガチ震えていた。
恐怖でパニクってた俺は、とにかくこの駐車場から出なきゃいけない、逃げなきゃいけないと思い、
強引ではあるが、出入り口に止まっている軽と柵の間のスペースに、車を滑り込ませて無理矢理すり抜けようとした。
左の柵に当たった。バリバリといやな音を立てて、車と柵が悲鳴を上げた。
しかしそれどころじゃなかった。隣にある軽の方を見ないようにして、思いっきりアクセルを踏んだ。
車の頭が駐車場から道に入った瞬間、ついうっかり右を見てしまった。
視界に軽自動車が入った。中の人が全員こちらを見て笑っているように見えた。
そこで物凄い衝撃を食らって意識がなくなった。気付いたら病院だった。

結局、駐車場から車の頭を物凄い勢いで出した俺の車に、
普通に走ってきた車が、俺の車のフロント部分横へぶつかったのである。
Aは頭を打ったらしいがほとんど外傷がなく、軽い打ち身があちこちにあるくらいで無事だった。
俺は開いたエアバックに思いっきりぶつかったせいなのだろうか?
鼻を骨折して前歯が3本ほど折れて、足もどうやったのか分かんないけど、右足の骨にヒビが入っていた。
打ち身も体のあちこちに出来ていて熱が出て、しばらく入院を余儀なくされた。
相手の方は、20過ぎの女性で無傷だった。お互いに車はボコボコだったけど・・・。
結局、警察と保険屋が入って、お互い話し合いして決着は付いた。

後日、退院できるかなといった時に、事故った相手の女性が見舞いに来てくれた。
相手の女性に軽自動車の事を聞いたら、そんな車はいなかったと言われた。

先に退院したAは、やはり前に走っている時から、あの軽自動車の中身が分かっていたらしい。
俺が見てないのなら、俺にまで変な恐怖を味あわせたくなかったから、黙っていたらしい。

車は直せない事もなさそうだったけど、なんだか縁起が悪そうだから廃車にした。

退院はできたけど、打ち身の痣がしばらく消えなかった。
なんだか痣の形が、手のひらで叩いた後のようになっていた。
それも、大きい物から小さい物まで、たくさんの人に叩かれたようになっていた。
ちなみに、Aの体に出来た打ち身もそんな感じだったらしい。

Aが、財布の中に入れてあった母親から貰った、身代わりお守りが粉々に割れていたとも言っていた。

結局、手の形をした痣もそれも、時間はかかったけど今ではすっかり綺麗に直った。

オチも何もないけど、洒落にならんかった。怖かった。あの軽自動車もなんだったか分からない。
今でも車を運転していて後ろを煽られると、あの時の事を思い出す。

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